襖紙とは、襖の表面に貼られる上貼り紙のこと。
構造面でも意匠面でも最も重要な役割を果たす部材で、
図のように分類されます。

■和紙襖紙
襖紙に用いられる和紙は、伝統的な手漉き技法(流し漉きなど)になるものと、特殊な抄紙機による機械漉きのものがあります。鳥の子については、手漉きのものには語頭に「本」の文字を付けて「本鳥の子」、機械漉きのものは「鳥の子」と区別しています。

本鳥の子
(ほんとりのこ)
雁皮・三椏・楮など靱皮繊維を紙料にした手漉きの紙で、ツヤが美しく永持ちします。上質な鳥の子ほど施工時には十分な配慮が必要です。
鳥の子
(とりのこ)
本鳥の子が手漉きで作られるのに比べ、鳥の子は抄紙機で漉きます。紙料もさまざまで、機械によって風合いも手漉きに近いものができます。
麻紙
(まし)
麻を紙料として漉いた強靱な和紙。襖紙には肉筆画を施す際によく使われ、また紙表に美しい雲肌をつくれるため、無地としても用いられます。
楮紙
(こうぞし)
楮を紙料とする最も強靱な和紙で、男性的な風合いがあります。他の紙料と漉き合わせたり、楮の黒川を装飾として漉き込むこともあります。
本鳥の子漉き模様
(ほんとりのこすきもよう)
下地になる手漉きの和紙の上に、三椏や楮の紙料で、流し込みなどのさまざまな技法で模様をつけたもの。手漉きならではの高級感があります。
鳥の子漉き模様
(とりのこすきもよう)
表の層は本鳥の子漉き模様と同じような紙料と技法を用いますが、下地になる和紙を手漉きでなく抄紙機で漉くため、価格的に安くなります。
上新鳥の子
(じょうしんとりのこ)
鳥の子の普及品で、すべて機械漉きのため比較的低価格。漉き模様や後加工によるさまざまな図柄があり、一般には略して『上新』と呼ばれます。
新鳥の子
(しんとりのこ)
製紙から模様付けまで一貫して機械生産される、最も廉価な襖紙。下地の透き止めのため紙裏が茶色のものが多く、『茶裏新鳥』と呼ばれます。
■織物襖紙
織物は伝統的に用いられた天然素材のものと、合成繊維を用いたものに分けられます。天然素材のものは主に高級な無地として用いられていますが、素材の性格上、合成繊維に比べて一枚ごとに織り上がりの風合いが違います。この変化が天然素材の面白さといえます。
天然素材の織物
葛布
(くずふ)
葛の繊維を横糸に用いて織ったもので、強靱で耐水性に富んでいます。野趣に富む風合いが特徴で、古くから静岡県の掛川でつくられています。

(きぬしけ)
繭の外皮のあら糸を横糸にした絹織物で、糸そのものの不揃いさが独特の風合いを生みます。絹の光沢を引き立てる様々な色に染められます。
芭蕉布
(ばしょうふ)
古くから沖縄に伝わる、縦糸に木綿や麻糸、横糸に糸芭蕉の繊維を用いた芭蕉布。現在は麻糸などを用いて張りのある風合いを表しています。
シルケット
横糸を麻、縦糸を木綿で織ったもので、平滑でなめらかな風合いが好まれ、天然素材のものの中では最もよく使われてきました。
合成繊維の織物
上級織物
主としてドビー織などによる、縦糸・横糸ともに糸目の詰んだ高級な織物ふすま紙です。加飾される絵柄も一枚ずつ丁寧に手加工されます。
中級織物
長繊維のレーヨン糸など、手ごろで変化のある風合いが好まれています。絵柄は手加工や最新の技術を駆使したさまざまな種類のものがあります。
普及品織物
レーヨン糸などを用いた低価格の織物襖紙。絵柄は特殊な輪転・オフセット・スクリーン印刷機などで加工され、画一的なものが多くなります。
■ビニール襖紙
塩化ビニールなどの合成樹脂製の襖紙で、耐水性と汚れにくさを特徴とし、水回りや廊下側、洋間側によく使われます。模様は無地朝の物が多く作られています。

〜楮を使った流し漉きの場合〜
1.伐採(ばっさい)
落葉が終わった10月〜12月に刈り取りをし、一定の長さに揃えます。
2.原木蒸し(げんぼくむし)
原木は乾燥しないうちに大釜で蒸して、皮をはぎやすくします。
3.剥皮作業(はくひさぎょう)
蒸し終えた原木にすぐ冷水をかけ、一気に樹皮をはぎます。はいだ皮を「黒皮」といいます。
4.黒皮剥ぎ(くろかわはぎ)
黒皮を水に浸し、表皮を洗い流します。さらにその下の甘皮を除いて繊維質だけにします。これを「白皮」といいます。
5.白皮(しろかわ)
白皮を天日で乾かします。寒風に晒すほど質がよくなり、雪がかかると漂白効果があるともいわれています。
6.煮熟(しゃじゅく)
白皮に含まれる不純物を溶かすため、アルカリ性の木灰やソーダ灰などを加えて大釜で煮ます。
7.塵取り(ちりとり)
煮熟した白皮をよく水洗いし、不純物や塵を取り除きながらアクを抜きます。
8.叩解(こうかい)
白皮を棒でていねいに叩き、繊維を一本ずつバラバラにします。
9.紙出し
叩いた白皮を布袋に入れ、きれいな水の中でさらします。これで紙料ができあがります。
10.ネリ作り
トロロアオイの根を砕き、でてくる粘液をろ過してネリを作ります。
11.紙漉き
漉き舟で水と紙料を混ぜ、ネリを加えて十分に攪拌します。漉簀(すきず)で紙料をすくい、繊維を平均に絡み合わせるよう揺すりながら、求める厚みになるまで何度も繰り返します。この揺すりながら漉く方法を流し漉きといいます。
12.圧搾(あっさく)
漉き上げた湿紙は簀からはずし、一枚ごとに布を挟んで紙床板(しといた)に重ねます。一晩おいてさらに残った水分を取るため重力を加えて搾ります。
13.板張り
湿紙を一枚ずつ干し板に伸ばしながら張りつけます。ネリの作用で完全に一枚一枚剥ぐことができます。
14.乾燥
干し板を日光で干したり、乾燥室に入れて熱風で乾燥させたりします。

◆抄紙技法による分類
一般に漉き模様と呼ばれるもので、紙を漉き上げる工程の中で、さまざまな模様をつける技法です。これらの技法は単独でも用いられますが、併用することでより繊細な表現ができます。
1.打雲(うちぐも)・飛雲(とびぐも)
打雲は、紙の天地に雲がたなびいたように藍や紫の繊維を漉きかけたもの、飛雲は同様の技法で空を飛ぶ雲を表したものです。現在ではこの技法を発展させ、草花・山水などさまざまな模様が漉かれています。
2.雲竜紙(うんりゅうし)
打雲の技法と流し漉きの特長を巧みに利用したもので、着色した繊維や手ちぎりの長い繊維などを使い、紙全体に雲の模様をつくりだします。この雲竜紙は漉き模様紙の中でも最も種類が多くて普及しています。
3.水玉紙(みずたまし)・落水紙(らくすいし)・水流紙(すいりゅうし)
簀の上の湿紙に水をかけて模様をつくる技法です。 水玉紙:水滴を散らして、水玉模様をつくります。 落水紙:湿紙の上に型を置き、水滴を落として模様をつくりだします。 水流紙:ジョウロや複数の穴の空いたパイプなどで水を流し、縞状の模様をつくります。
4.塵入り紙(ちりいりし)
本来はそぎ落としていた楮の表皮(黒皮)などの素材をあえて漉き込み、素朴な味わいを生み出します。
5.漉き合わせ紙(すきあわせし)
塵入り紙と違い、最初から装飾目的で2枚の紙の間に紅葉や笹など、さまざまなものを漉き合わせる技法です。
6.金銀粉(きんぎんふん)、雲母粉混入紙(うんもふんこんにゅうし)
三椏の繊維とよくからみ合わせた金銀粉、雲母粉を通常の紙料と一緒に漉き込む、上品な表現です。
7.流し込み模様紙(ながしこみもようし)
湿紙上に模様の形の木や金属の型枠を置き、その中へ染色された紙料を流し込むことで模様をつくります。
8.引っ掛け紙(ひっかけし)
水槽の中に浮遊している三椏や楮の繊維を薄い金属板のヘリに引っ掛けて持ち上げ、別に漉いておいた湿紙に付着させる技法です。
9.透き入れ紙(すきいれし)
簀の上に紗(シャ)の型紙を貼って漉き、紙面に凹凸を与えて模様をつくります。
このほか、檀紙(だんし)、布目紙(ぬのめし)、置き模様紙、大正水玉紙(たいしょうみずたまし)など、さまざまな種類の技法があります。
◆加飾技法による分類
〜金、銀箔などの技法〜
金箔・銀箔・プラチナ箔・銅箔などを用いて加飾する、華麗で伝統的な技法です。
1.金銀砂子細工(きんぎんすなございく)
金銀の箔を上質の竹筒に網を張ったものに入れ、蒔き散らしながら模様をつくります。蒔絵が金粉を用いるのと違い、砂子細工は金箔を用います。
2.箔押し(はくおし)
金箔や銀箔などを貼り付ける技法で、襖の表面に膠(にかわ)で貼り付けます。金屏風のように紙面全体に箔押しするものを「平押し」といいます。
3.截金(きりがね)
厚めの箔を細長く截り、貼り付けて模様をつくります。箔押しが箔一枚のまま貼り付けるのと違い、必要な大きさに截り、直線や曲線状に貼り付けます。
〜木版による技法〜
模様を彫った版木に顔料・染料をのせて和紙に写し取る技法と、木版を和紙の下に敷いて紙表から模様を磨き出す技法とがあります。
1.雲母押し(きらおし)
模様を彫った版木に、雲母と糊を混ぜた絵の具をのせ、その上に和紙をおいてやさしく写し取ります。ふっくらした柔らかさがあります。
2.漆押し(うるしおし)
にじみを防ぐため礬水(どうさ)を強めに施した和紙に、版木にのせた漆を写し取ります。経年とともに生漆の光沢が和紙の風合いになじみます。
3.磨き出し(みがきだし)
薄めの和紙の表にあらかじめ銀泥や銀砂子を施し、模様を彫刻した木版の上で紙の表を研ぎ、模様を銀のグラデーションで浮き立たせる技法です。
〜型紙による技法〜
型紙の上から顔料・染料を摺り込む技法で、柿渋で強度と耐水性を与えた和紙にさまざまな模様が彫られた型を、渋型といいます。
1.置き上げ(おきあげ)
和紙の上に渋型を置き、雲母(きら)や胡粉(ごふん)を竹べらで摺り込む技法。型紙の厚さによって厚みのあるシャープな模様になります。

2.更紗(さらさ)
織物に絵の具をボタン刷毛で摺り込むため、多彩で柔らかな表現ができます。主に唐草などの伝統的な模様(更紗模様)に使われます。

〜刷毛引きによる技法〜
さまざまな刷毛を用いて金銀泥や顔料を引き染めします。刷毛を押しつけたり揺すったり引いたりして、独特な風合いを表現します。
1.泥引き(でいびき)
和紙に金泥・銀泥を刷毛を用いて引き染めします。金・銀箔のメタリックな表現と違って穏やかな落ち着いた金・銀色が表現できます。
2.丁子引き(ちょうじびき)
櫛状に間引いた刷毛などを用いて不規則な丁子模様(縞模様)を引き染めします。
3.むしろ引き
むしろや縄の上に湿った和紙をのせ絵の具を含んだ刷毛で引き、むしろの凹凸を利用した味のある縞模様や格子模様をつくります。
4.ぼかし染め
水を含ませた1尺〜1.2尺寸の刷毛に、筆で絵の具を浸み込ませて引き染めします。一丁の刷毛で柔らかなグラデーションをつくります。
〜揉みによる技法〜
和紙を繰り返し四方から揉み、その揉み皺を模様とします。繰り返し揉むために紙は強度のある手漉きの楮紙などを使います。
1.雲母揉み(きらもみ)
雲母引きした紙を揉むと、皺の部分の雲母が剥落して味が出ます。あらかじめ雲母と調和した絵の具を地引きすることもあります。
2.水揉み(みずもみ)
礬水(どうさ)などを引いて弱い耐性をつけた和紙に淡い色の染料を刷毛染めし、濡れたままで揉みます。揉み皺の礬水(どうさ)が剥げてそこだけ強く浸み込み、揉みの風合いを際だたせます。
・近年の加工技法
1.ピース加工
エアースプレー(エアーブラシ)を用いた方法で、ぼかしの柔らかな表現が特長です。手作業での彩色は、特に金銀色のぼかしは独壇場です。
2.スクリーン印刷
枠にスクリーン(紗)を張ったものに模様を焼き付け、スキージを用いて模様を摺り込みます。濃淡の変化などをつけるのが容易です。
3.オフセット印刷
平版印刷の一種で、通常のオフセット印刷を改良して、織物への印刷にも対応します。微細で精緻な表現が特長で、量産性も高い技法です。
4.輪転印刷
襖紙用の特殊な輪転印刷機を使います。巻き取りの紙や織物に高速で印刷し、廉価で均質、施工性の良さなどの特徴があります。